PHP研究所では、中原淳氏(立教大学経営学部 教授)と共同開発したフィードバック研修の普及に取り組んできました。これまで数多くの企業・団体で実施してきましたが、その経験知をふまえ、どうすれば研修効果が上がるのか考えてみたいと思います。, 「今、はやりのフィードバック研修を実施したい」「フィードバックのスキルだけ教えてくれればいい」「現場が忙しいから、半日でプログラムを組めないか」……。, 私どもPHP研究所には、企業・団体の人事・人材開発ご担当者の方から、フィードバック研修に関するお問い合わせやご相談が数多く寄せられます。いずれも、その企業・団体の直面する現状を反映しての相談なので、極力ご要望どおりに対応しなければいけませんが、ご相談内容によっては、違う形での実施を提案させていただくことがあります。, 貴重なお金と時間を投入して研修を実施しても効果が上がらない「残念なフィードバック研修」には、次のような特徴があります。, たとえスキルを習得したとしても、部下との信頼関係が構築できていなかったらフィードバックは機能しません。上司-部下間の関係が険悪な状況でフィードバックを実施してもうまくいかないのは自明の理であるにもかかわらず、「短時間でスキルだけ学びたい」というご要望が多いです。, 学んだスキルが活きるためには、部下に対する肯定的な人間観(彼・彼女には可能性があるという信頼感)を上司がもち、相互の信頼関係を構築する必要があります。ピラミッド構造の土台を築くことなく、上層部だけ学んでも研修効果はあがらないでしょう。, プログラムの品質面でも講師の力量面でも、共に申し分ないとしても、研修の中で扱う事例や用語が受講者の実態に合っていないと、研修効果は限定的になってしまいます。特にフィードバック研修の場合は、ロールプレイを中心にスキルを学ぶ構成になっていますので、ロールプレイの状況設定が学びの質を決めると言っても過言ではありません。「このロールプレイの状況って、うちの職場にもあるなあ」という“あるある感”を感じさせるような状況設定にしないと受講者を本気にさせることはむずかしいでしょう。, 企業・団体で実施されるフィードバック研修は、1日で完了するケースがほとんどです。「働き方改革」の影響で研修時間が短縮されるのはやむを得ないですが、問題は事後のフォローがなされず「研修さえ実施すればそれでよし」とする傾向があることです。, 人材開発の基本は反復しかありません。フィードバック研修で学んだ考え方とスキルについても、現場で何度も繰り返し使ってみて初めて身につくものです。, したがって、研修実施後の職場実践と、その成果を確認する仕組みをデザインしていないと効果はあがりにくいでしょう。, ここまで、効果があがりにくい「残念なフィードバック研修」の特徴をご紹介しましたが、これらを逆説的に捉えることで、研修効果を上げる3つのポイントが見えてきます。, 既述のピラミッド構造の如く、「スキル」を支える「上司-部下間の信頼関係の構築」と「部下に対する肯定的な人間観」を併せて学ぶことで、研修効果は高まります。, 製造業のA社(従業員数2,000名)では、スキル偏重の研修を長年管理職に対して実施していましたが、職場の活力が一向に高まらず離職者が増え続けるという問題を抱えていました。管理職の多くが人を育てる意識が希薄で、研修で学んだスキルも、「効率的に部下を動かす道具」として使う人が大半でした。そこで、研修内容を見直し、スキルだけではなくマインドも併せて学ぶプログラムに切り替えたところ、従業員の定着率が改善するという効果が出たのです。, 研修の中に、リアリティを感じる状況を意図的につくることで、受講者の理解と気づきが深まります。そのためには、関係者からのヒアリングや現場の視察等を通じて、リアルな情報を収集し、それを活かしたカスタマイズプログラムを用意することが望ましいでしょう, 総合病院のB病院から弊社あてに、「医療現場にフィットしたフィードバック研修を実施したい」とのご相談がありました。そこで、病院の現場を見学させていただき収集した情報をもとに、「立ち仕事をしながら短い時間で行うフィードバック」のロールプレイのシナリオを開発しました。受講生からは「現場に帰って何をすればいいかよくわかった」との感想が上がっています。, 学びっぱなしではなく、学んだことを職場実践につなげていく仕組みをつくることで受講者の意識変容・行動変容は促進されます。経験学習モデルにあるように、経験と振り返りを通じて人は成長するのです。下記のプログラム例にあるように、研修実施後のフォローを最初からビルトインした仕組みを作ることが重要となるでしょう。, 今、注目のフィードバックは、管理職の指導力強化という観点からだけではなく、組織開発の観点からも大きな可能性を秘めた手法と言えます。そのためにも、上記3カ条を参考にしながら自社に合った正しい導入のあり方を追求していただきたいと思います。, 1990年、慶應義塾大学商学部卒業。同年、(株)PHP研究所入社、研修局に配属。以後、一貫して研修事業に携わり、普及、企画、プログラム開発、講師活動に従事。2003年、神戸大学大学院経営学研究科でMBA取得。中小企業診断士。「松下幸之助経営塾」ファシリテーター。, 【第2位】新型コロナウイルス感染症対応で新入社員研修の計画見直しを迫られている人事の皆様へ. 確かな学力を定着させるフィードバック学習方式. 人材開発の基本は反復しかありません。フィードバック研修で学んだ考え方とスキルについても、現場で何度も繰り返し使ってみて初めて身につくものです。 したがって、研修実施後の職場実践と、その成果を確認する仕組みをデザインしていないと効果はあがりにくいでしょう。 ここまで、� ページ番号1012689 更新日 2020年1月25日 印刷 大きな文字で印刷. 教師の間では知る人ぞ知る必読書. 現在の位置: トップページ > 板橋区教育委員会 > 教育についての取り組み > 特色ある学校教育 > フィードバック学習方式 ここから本文です。 フィードバック学習方式. 小学校・中学校・高等学校での フィードバック -slaフィードバック研究から考える- 英語教育フォーラム パネルディスカッション 「小・中・高等学校の英語教育と第二言語習得研究-インプット, アウ トプット, フィードバック, インタラクションの観点から」 2012.12.08. PLCは、Professional Learning Community(プロの教師集団として学び続けるコミュニティとしての学校)の略です。それこそが、, なお、一方通行の時代ではすでにないので、双方通行のやりとりこそが大切だと思っています。読者のご希望、疑問・質問、感想、実践紹介、各種情報提供、テーマに関するお勧めの本の紹介等は、コメント欄にぜひ書いてください。お願いします。(コメント欄の代わりに、pro.workshop@gmail.com宛にメールを下さっても結構です。必ず反応します。), 作家の時間や読書家の時間などのワークショップ授業では、個別カンファランス(個に応じた指導・相談)が欠かせません。ワークショップ授業の導入時には、子ども達はみるからに意欲的に学習を進め、話し合っています。しかし、教師や子どもたちも、学力がのびている実感をあまりもてないことがあります。その一因に、授業を子どもに任せっぱなしにしてしまい、フィードバックの必要な場面に介入していない。学習者の実態にあわせたフィードバックがおこなわれていないことがあります。, フィードバックとは、教師や親、友だちなどからの「人」や、教科書や参考書、作品などからの「もの」といった情報を媒体として、学習者の情意面(やる気や集中力など)と認知面(知識や考え方など)に働きかけ、学習者の知識を増やし、その知識を再構築するものです。, 現状の教育現場ではフィードバックを誤解されることが多く、あまり効果的に用いられていません。例えば、フィードバックは「たくさん量を増やすほうがいい」「関わりは多いにこしたことはない」と思われていますが、大切なことは決して量だけではありません。学習に効果の高いフィードバックが、子どもの学習に対しておこなわれているかどうかです。それは、学習者同士でもいえることです。子どもたち同士で教え合ったりする授業のやりとりのフィードバックの大方は間違っているとする論文もあります。(, シールや賞などのご褒美といったフィードバックは、学習の成果に対しておこなわれています。しかし、学習者にとってシールや賞などは学力そのものを伸ばす情報提供とはなっていないため、効果的なフィードバックとはいえません。(, 大きな誤解の一つは、「フィードバックは教師から、学習者へ(一方的に)与えられるもの」と理解してしまっていることです。フィードバックは、学習者の視点に立つことが何よりも大切です。学習者がどのように教師からのアドバイスを受け取り、その後、学習者がどのように行動したのかが大切なのです。フィードバックは、教師から与えられて決して終わりではありません。, フィードバックが効果的に発揮するためには、情意面において、とくに学習者の「心理的な安心感」が大切です。学習者がよりよく、素直にフィードバックを受け入れるためにも、日頃より関係をつくり、学習の目的へ一緒に向かっていく姿勢が求められます。, その際、フィードバックが学習者の人格に踏み込まず、脅かすことがないとき、学習者の注意はその学習そのものへと安心して向くようになります。教師は、学習者に、できないところを指摘するのではなく、できるようになるためのアドバイスをします。過去との比較でより成長した点を伝える方がより効果が高いことがわかっています。このようにフィードバックを素直に受け取り、学習者が変わっていこうと学び始めるためにも、学級集団がもつ「失敗しても許される、もしくは、歓迎されている」雰囲気を醸成していく必要があります。, レベル1 浅い学びとしての基本的な知識・技能(かけ算九九の仕組みを理解しているか、覚えているか), レベル2 深い学びとしての考え方や学び方(かけ算九九とこれまでの筆算の形式をつかって、, レベル3 自分をふりかえるメタ認知(自分の問題解決をふりかえり、取り組み初めの気持ちや自信、どこで解法のアイデアがひらめいたかなど), フィードバックは、レベル1の知識・技能からレベル2の考え方・思考法へ、さらにはレベル3のメタ認知へと、より高度なレベルへと適切に与えていきます。, ワークショップ授業における具体的なカンファランス場面では、①~③のステップで取り組むとよいでしょう。, ②「何ができるといいの?」とその学習の目的や到達度を問いかけ、現状とのギャップを見つけます。, ③「じゃぁ、何をしようか?」とそのギャップを埋めるために、具体的に次の行動目標を示すことです。この際、レベル1〜3に応じて、知識・技能を理解するためのアドバイスや、問題解決のプロセスの仕方への援助、ふりかえりの視点をフィードバックしていきます。, 学習の認知面において、学習がそもそも挑戦しがいのある適度な難易度のある課題となっているかによって、フィードバックの効果が大きく左右されます。すでに計算技能のある学習者に対して、「計算ドリルを, また、基本的な浅い知識として学習内容を理解していない場合では、フィードバックを与える関わりよりも基礎的なことをしっかりと指導したほうが効果的です。かけ算九九を理解していない子は、かけ算九九を理解して覚えるところから始めようということです。, このように、学力者の成長プロセスには、効果的なフィードバックが欠かせません。継続的に学習を支援し、形成的評価はフィードバックと言い切れるぐらいに大切なものです。ぜひ、これを機に、ふりかえってみてください。, ★「教育の効果 メタ分析による学力に影響を与える要因の効果の可視化」ジョン・ハッティ(著) 山森光陽(監訳)の第. ã¹ãã ãºç¤¾ã®ãµã¤ãï¼æ°ããã¦ã£ã³ãã¦ï¼, æè²å§å¡ä¼äºåå± æå°å®¤ã¸ã®ãåãåããã¯å°ç¨ãã©ã¼ã ããå©ç¨ãã ããã, æå°å®¤ãä½æãã¦ããå¯èªæ¬ãªã©, ä½åã¥ããã®æ¨é²âå¥ãããªä½ãè²æããâ, æ¿æ©åºç«ä¸å¦æ ¡é¨æ´»åã®å¨ãæ¹ã«é¢ããæ¹é, æ¿æ©åºã«ããããçµã¿ä½æãçã¸ã®å¯¾å¿æ¹éã®ä¸é¨æ¹è¨ã«ã¤ãã¦, åºç¬èªã®ãæ¿æ©åºå¦ç¿ãµãããã調æ»ã, ãã£ã¼ãããã¯å¦ç¿ææåã³è£å©ææã®æ´»ç¨, ãæ¿æ©åºå¦ç¿ãµãããã調æ»ï¼æ¤è¨¼èª¿æ»ï¼ãã®å®æ½, ãã£ã¼ãããã¯å¦ç¿ææã®æ´åã»æ¡å. Amazon. 成長する教師のための日本語教育ガイドブック〈下〉 3,024円. 現状の教育現場ではフィードバックを誤解されることが多く、あまり効果的に用いられていません。例えば、フィードバックは「たくさん量を増やすほうがいい」「関わりは多いにこしたことはない」と思われていますが、大切なことは決して量だけではありません。 日本語教育 について日々 ... 昔、日本語学校で学生との接し方、フィードバックの仕方について悩んでいた時、 たくさんヒントをもらえた本です.